満場一致で
農林水産大臣賞選出
名人和牛ストーリー#4
どんなに忙しくても牛を観察する時間を削らない
株式会社髙梨牧場の在る千葉県鴨川市は、千葉県南西部に位置し太平洋に面している。鴨川市は、一年を通して平均気温が高い年間を通して温暖な気候に恵まれた地域である。髙梨牧場の和牛肉は、東京食肉市場において「名人和牛」と「かずさ和牛」の2銘柄にて販売される。
○名人和牛とは・・・「最も美味しい穀物を与え、長期間飼育し、霜降りになった牛肉こそが、最も美味しい牛肉となる。」という考えのもと、こだわりの配合飼料「名人」を与えて育った和牛のこと。本会主催共進会にて、農林水産大臣賞受賞者は過去4回連続でこの「名人和牛」生産者となる。
○かずさ和牛とは・・・千葉県の銘柄和牛。東京食肉市場に多頭数出荷されている。
経営内容・実績
株式会社髙梨牧場は、千葉県鴨川市においてご家族で主に黒毛和種の肥育経営を営んでいる。飼養規模は、黒毛和種肥育300頭、乳用種去勢肥育80頭である。東京食肉市場において、大変肥育技術の高い生産者として知られ、農林水産大臣賞の受賞は、当会主催乳用種去勢牛共進会、第八回チバザビーフ共励会(2018年)に続き今回で3度目となった。
飼養管理で気を付けている事
髙梨牧場では、「粗飼料を十分に与えて肋張りを良くすると体幅・深みのある牛になる。」という考えのもと、粗飼料多給型の飼養管理をしている。導入初期には特に意識して丁寧に粗飼料主体の管理をしている。これによって体型が早い段階で決まり、出荷までそのまま順調に育ってくれる牛が増えたという。
さらに、粗飼料多給は素牛の段階で付いてしまっている無駄な脂を落とすことにも役立った。育成期に無駄な脂が筋間についてしまっていると、ロース芯の変形をはじめ枝肉になった際にマイナスの現象を引き起こす。一時期髙梨牧場では、ロース芯の変形が見られる出荷牛に悩んだ時期があった。しかし導入初期に無駄な筋間の脂を落としてから本格的な肥育に取り組むようにすると、その殆どが改善され、ロース芯が大きく、全体的につくりが良い枝肉が増えたとのことである。
肥育中~後期も給与している稲わらの繊維質の硬さや、糞便の硬さを注意深く観察する。稲わらが軟らかく軟便をしている牛がいれば、その都度バガス(サトウキビの搾りかすを利用した機能性飼料)で繊維質を追加給与し、糞をしめるようにしている。濃厚飼料と稲わらのバランスが取れていれば、軟便をすることがない。その状態が一番飼料効率がいい状態であるとのこと。どんなに忙しくても「牛を観察する時間を削らない」という事を一番に考えている。
入賞牛について
生体は出荷直前まで“そこそこいい牛”程度であったが、直前の雰囲気・仕上がりが文句なしだった。芝浦全共も入賞(平成30年度全国肉用牛枝肉共励会、優良賞受賞)させて頂いたが、同じ時期に仕上がっていたらどちらの牛を選ぶか悩んでしまうような牛だった。肥育後期に食いが止まることなく順調に仕上がったのでとても嬉しい。
今後の展望について
素牛高の現状ですので、必死にまじめに経営に取り組んでいくほかはない。牧場経営を続けていくうえで、繁殖にも挑戦していくことも視野に入れている。今後も名人会の皆さんと、「食べておいしい購買者に喜ばれる和牛づくり」を目指して頑張っていきたい。全国の名人会の先輩方に勉強させて頂き、同年代の生産者と切磋琢磨できる環境に感謝します。
取材協力:株式会社髙梨牧場 様